タワーマンションに住む夫婦の離婚での注意点 弁護士が徹底解説

1. 熟年離婚とタワーマンション問題の複雑さ

近年、都心部や利便性の高いエリアのタワーマンション(タワマン)で暮らす夫婦が離婚(特に熟年離婚)に至るケースが増えています。
タワマンは非常に高額な資産であるため、離婚時に夫婦の財産を清算し分配する「財産分与」において、最も大きな争点となります。
「夫の単独名義だから妻には権利がないのでは?」「ペアローンを組んでいるから離婚できないのでは?」といった誤解も多く見られますが、婚姻期間中に夫婦の協力によって取得・維持された財産であれば、名義に関わらず原則として財産分与の対象となります。
タワマンの財産分与を円滑に進めるためには、「マンションの評価額」「住宅ローンの残債」「名義や連帯保証の扱い」「税金の問題」という複雑に絡み合う要素を、一つずつ冷静に解きほぐしていく必要があります。

2. タワマンの「評価額」はどのように決めるのか?

タワマンの財産分与において最初にぶつかる壁が、「マンションの価値をいくらと評価するか」という問題です。
タワマンは、同じ建物内でも「階層(高層階か低層階か)」「方角・眺望」「専有面積」「共用施設の充実度」などによって、市場価格に数千万円もの差が出ることが珍しくありません。
また、購入時に自分好みの高額なオプション(内装のカスタマイズなど)をつけていたとしても、それが売却時にプラスに評価されるとは限らず、逆に「趣味が強すぎて買い手がつきにくい」と評価額が下がるケースすらあります。
財産分与の基準となるのは「固定資産税評価額」ではなく、実際に市場で売買される「現在の時価(実勢価格)」です。
夫婦間で「いくらで評価するか」の意見が対立した場合は、複数の不動産会社から査定を取り寄せて比較検討するか、最終的には費用をかけて不動産鑑定士に鑑定を依頼することになります。

3. 住宅ローンが残っている場合の2つのパターン

タワマンの時価が確定したら、次に「住宅ローンの残債」を確認し、以下の2つのパターンのどちらに該当するかを判断します。

① アンダーローン(マンションの時価 > ローン残高)

マンションの価値がローンの残高を上回っている状態です。
例えば、時価が8,000万円でローン残高が5,000万円の場合、差額の3,000万円が「純資産」として財産分与の対象となります。これを夫婦で原則2分の1ずつ(1,500万円ずつ)分け合うことになります。

② オーバーローン(マンションの時価 < ローン残高)

マンションを売却してもローンを完済できない状態です。
この場合、不動産単体としての価値はゼロ(マイナス)とみなされ、原則として積極的な財産分与の対象からは外れます。しかし、「残ったローン(借金)をどうやって返済していくか」という重い問題が残るため、預貯金などの他の財産と相殺したり、返済義務の分担について協議したりする必要があります。

4. タワマンの清算方法:3つの選択肢

タワマンをどのように清算するかは、主に以下の3つの選択肢から検討します。

① 売却して現金で分ける(換価分割)

最も公平で後腐れがない方法です。マンションを売却し、ローンと諸経費を完済した後に残った現金を2分の1ずつ分け合います。離婚後の生活を完全に切り離すことができるため、弁護士としても推奨することが多い選択肢です。

② 一方が住み続け、もう一方にお金を払う(代償分割)

例えば、妻と子どもがタワマンに住み続け、夫が出ていくケースです。この場合、妻はマンションを取得する代わりに、夫の取り分に相当する現金(代償金)を支払う必要があります。タワマンは高額なため、代償金として数千万円の現金を用意しなければならないケースもあり、資金調達が大きなネックとなります。

③ 共有名義のまま維持する(現物分割)

「子どもが卒業するまで」などの理由で、一時的に共有名義のままにしておく方法です。しかし、将来売却する際に相手の同意が必要になったり、相手がローンを滞納してマンションが差し押さえられたりするリスクが非常に高いため、特別な事情がない限り避けるべきです。

5. 住宅ローンの名義や「連帯保証」の落とし穴

タワマンのような高額物件では、夫婦の収入を合算する「ペアローン」や、一方がもう一方の「連帯保証人(または連帯債務者)」になっているケースが非常に多いです。
ここで絶対に注意すべきなのは、夫婦間で「離婚後は夫がローンを全額払う」と離婚協議書(公正証書)で取り決めたとしても、それはあくまで「夫婦間の約束」に過ぎず、銀行(債権者)には通用しないということです。
銀行にとって離婚は個人的な事情であり、連帯保証人から外してくれる正当な理由にはなりません。もし夫がローンの支払いを滞納すれば、銀行は当然のように別れた妻(連帯保証人)に対して一括返済を求めてきます。
このリスクを完全に断ち切るためには、

①マンションを売却してローンを完済する

②住み続ける側が単独名義で別の銀行からローンを借り換える

③代わりの連帯保証人(親など)を立てて銀行に承認してもらう

といった根本的な解決策を実行しなければなりません。

6. 婚姻前の貯金や親からの援助(特有財産)がある場合

タワマン購入時の頭金として、自分の「独身時代の貯金」や「親からの援助(贈与や相続)」を支払っていた場合、その金額分は夫婦の共有財産ではなく、個人の「特有財産」として財産分与の対象から除外(控除)できる可能性があります。
ただし、「購入時に1,000万円出したから、そのまま1,000万円を返してほしい」という単純な計算にはなりません。購入時から現在までの間にマンションの価値が変動(値上がりまたは値下がり)しているため、購入価格に対する特有財産の出資割合を算出し、現在の時価に掛け合わせて計算し直すなどの複雑な調整が必要になります。

7. タワマンを譲った側に「税金」がかかるリスク

財産分与で盲点になりやすいのが「譲渡所得税」の問題です。
例えば、夫名義のタワマンを財産分与として妻に譲渡(名義変更)した場合、税務上は「夫が妻に、現在の時価でマンションを売却した」とみなされます。
もし購入時よりも現在のタワマンの価値が大きく値上がりしていた場合、夫に対して多額の譲渡所得税が課せられる可能性があるのです。
この場合、居住用財産の3,000万円特別控除などの特例が使えるかどうかなど、必ず税理士や税務署への事前確認が必要になります。

8. 早い段階で弁護士に相談すべき理由

タワマンの財産分与は、不動産の査定、ローンの残債確認、特有財産の計算、連帯保証の解除、税金対策など、法律・不動産・金融の知識が複雑に絡み合う極めて難易度の高い問題です。
「とりあえず離婚届を出してから考えよう」と後回しにしてしまうと、相手と連絡が取れなくなって名義変更ができなくなったり、ローン滞納の巻き添えを食らったりと、取り返しのつかないトラブルに発展する危険性があります。
タワマンに住む夫婦が離婚を考えた際は、本格的な話し合いを始める前に、登記簿謄本や住宅ローンの返済予定表などの資料を手元に集め、まずは離婚や不動産問題に強い弁護士に相談してください。
弁護士が介入することで、法的に適正な財産分与額の算出や、銀行との複雑な調整、相手方との交渉をすべて任せることができ、将来の生活基盤を安全に守るための最適な解決策を導き出してくれます。
是非島・鈴木法律事務所初回無料相談をご利用ください。
離婚弁護士として事案に即した適切なアドバイスをさせていただきます。

執筆者
島武広 
島・鈴木法律事務所 
代表弁護士(神奈川県弁護士会所属)

当サイトでは、離婚問題にまつわるお悩みに対して、弁護士の視点で解説をしています。また、当事務所にて携わった事案のポイントも定期的に更新しています。地元横須賀で、「迅速な解決」を大切に代理人として事件の解決に向けて取り組んでいます。

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