退職金の財産分与
・ もくじ ・
- 1 1.退職金は財産分与の対象となるか
- 2 2.退職金を財産分与する場合の計算方法
- 3 3.退職金を財産分与で受け取れないことが多々ある
- 4 4 退職金の財産分与を請求する方法
- 5 退職金の財産分与に関するQ&A
1.退職金は財産分与の対象となるか
離婚時には、夫婦で築いてきた財産を二人で分けることとなります。
これを財産分与と言いますが、夫婦の一方または双方が長年働いてきた場合に支払われる退職金は財産分与の対象となるでしょうか。
答えから先に言いますと対象になると言うことになります。
ただし、退職金がいついかなる時も財産分与の対象となり、どんなケースでも支払わなければならないかというとそうではありません。以下問題点を述べていきます。
また、退職金が既に支払われていて手元に残っている場合、婚姻期間分が財産分与の対象になります。一方で、退職金がまだ支払われていないと、財産分与の対象にはならない可能性があります。このように、状況によって、退職金が財産分与の対象になるかどうかは違ってきます。
2.退職金を財産分与する場合の計算方法
まず、財産分与の対象となる退職金の範囲は、その時点の退職金を継続勤務年数分の結婚年数でかけた金額が対象となります。
例えば、勤続25年の会社の退職金が現時点で2500万円、結婚20年の場合、
2500万円×(20÷25)=2000万円
が財産分与の対象になります。
そして、その2000万円を夫婦共有財産として財産分与することになります。
財産分与は殆どのケースで2分の1に分けるため、1000万円というのがこのケースで妻の獲得する退職金となります。
ただ、これらの計算は、単純な事案に関するものです。実際には、退職金の具体的な制度や結婚生活の状況によって変わることがありますので、ご注意ください。
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3.退職金を財産分与で受け取れないことが多々ある
退職金の計算方法がわかったとして、全てのケースでもらえるかというとかならずしもそうではありません。
むしろ、もらえないケースが多かったりします。
その理由の1つとして、退職金は本当に支給されるかわからないということがあります。
例えば、今1000万円の財産分与をした後、数年後に勤務先が倒産してしまうと財産分与をした方は払い損となってしまいます。
また、40歳くらいの年齢では退職まで20年以上もの期間があり、遠い将来に支給されるかわからない退職金を今の財産分与の対象とすることを裁判所はなかなか認めないのです。
また、今の時点で退職金の見込み金額がわかったとしても、実際に夫がそれを受領できるのは何十年も先かもしれませんので、妻がそれを受け取ろうとしても、いつ得られるかもわからないのです。
一般的な話としては、公務員であれば比較的早期でも認められる傾向にあり、民間企業ですといわゆる一流企業でも50歳などある程度退職金の給付時期と近接していることが求められます。
相手の会社が中小企業であった場合などは少し支給まで時間があると認められないことがあるのです。
また、仮に、財産分与が認められる場合であっても、将来、退職金が支給された時点で初めて分与を受けられるという場合もあります。
ですので、退職金については、簡単に結論を出すことは難しく、具体的なケースごとに判断していくしかありません。
退職金がまだ支払われていない場合、“退職金が支払われることがほぼ確実である”といえる場合には、財産分与の対象になる可能性が高いです。
退職金が財産分与の対象となる際に考慮されるポイント
退職金の支払われるかどうかは、次のような事情を踏まえて判断されます。
- 就業規則等で退職金について定められているか
- 退職金の算定方法が明らかになっているか
- 会社の規模
- 定年退職までの期間
-
これまでの勤務状況
一般的に、定年退職までの期間が10年以上になると、退職金が支払われる確実性は低いと判断される傾向にあります。
4 退職金の財産分与を請求する方法
離婚するときに退職金の財産分与を請求する場合は、離婚条件の一つとして請求するのが通常です。
まずは夫婦間で話し合ってみて、解決できそうにないときは、家庭裁判所の調停委員を間に挟んで話し合う離婚調停を行います。そして、離婚調停を行ってもなお決められないときは、裁判所の判断を求めて離婚裁判を行うというのが一般的な流れです。
また、離婚後でも基本的に2年以内であれば、退職金の財産分与を請求できます。離婚後に請求する場合は、財産分与のみを単独で請求することになります。
まずは夫婦間で話し合い、意見がまとまらないとき等には、家庭裁判所に「財産分与請求調停」を申し立てます。調停では調停委員を通して話し合っていきますが、調停不成立となったときには自動的に「審判」という手続きに移ります。審判の手続きでは、裁判官の判断で財産分与について決められます。なお、調停を行わずにいきなり審判の申立てをすることも可能です。
退職金の財産分与に関するQ&A
Q:離婚相手が公務員の場合、定年まであと10年以上ありますが退職金を財産分与の対象とすることはできますか?
A:
公務員の場合、定年まで10年以上の期間があいていても、退職金は財産分与の対象として認められる可能性が高いです。
Q:財産分与した退職金をすぐに受け取ることはできますか?
A:
財産分与について決めたとき、支払期限を早くに設定していれば、取り決めをしてすぐにでも受け取ることはできます。ただ、現実には他の財産がない場合、頭金をもらい、残りを月々いくらと決め、退職金支給時にまだ残金があれば残金全額とすることが一般的です。
Q:共働きをしていた場合、退職金の財産分与に影響はありますか?
A:
婚姻期間に応じた分の退職金が、財産分与の対象になります。
夫の退職金はもらい、私の退職金はあげないということはできません。
Q:夫(妻)が退職金の財産分与をしてくれません、どのような手続きをとれば良いですか?
A:
調停・裁判と手続を進めていくことになります。
裁判となれば、ある程度の段階で判決となれば退職金が財産分与の対象となるかどうか裁判官が心証を開示します。
もし、退職金が財産分与の対象となるか微妙な事案の場合、調停・裁判をするのか検討することが必要です。
以上述べてきたとおり離婚時の退職金の扱いについては、このように難しい問題が多くありますので、経験豊富な離婚に注力している弁護士に相談していただくのが一番です。
当事務所では、これまで退職金に関する財産分与を多数扱っております。
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代表弁護士(神奈川県弁護士会所属)
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