離婚調停を申し立てたい方へ

1. 離婚調停を申立てたほうが良い場合

夫婦間での話合いである離婚協議の折り合いがつかない場合、公平な第三者である調停委員を間に入れて、家庭裁判所での調停手続きを進めることになります。離婚協議から離婚調停に移行するのが良い方は、以下のケースに該当する方です。

離婚を拒否している

相手が離婚を頑なに拒んでいる場合、直接話合いで離婚を要求してもかえって相手を頑なにし、話し合いにならないことが多いです。

その場合、公平な第三者である調停委員に入ってもらい、客観的な状況を調停員から伝えてもらうことで、離婚に向けた話し合いを進展させることが可能なケースもあります。

 

相手が感情的になりやすく、きちんとした話し合いにならない

特に、パートナーがDVをしてきたりやモラハラを繰り返す傾向にある方は、このケースに当てはまるかもしれません。

「相手が離婚を拒絶している」ケースと同様に、第三者である調停委員が話し合いに入ることで、感情的だった相手との話し合いがスムーズになることもあります。DVやモラハラ気味の方は、第三者を前にすると、特に裁判所等の権威ある人間を目の前にすると常識人でいようとすることも多く、調停になった途端に離婚が決まることもあります。

また、裁判所での手続きだから弁護士が必要と相手が考え、相手に弁護士が付いた場合、より建設的な話し合いが可能となります。

ただし、相手方に弁護士が付いた場合、プロ相手に立ち向かうことはリスクが大きく、こちらに不利な条件で離婚が成立してしまう可能性もあるので、こちらも弁護士に依頼することをお勧めいたします。

 

 

相手が財産開示に応じてくれない

相手が財産開示に応じない場合、「調査嘱託」という手続きを取ることで財産開示を求めることが出来ます。

調査嘱託とは、裁判所を通じて各機関に問い合わせをして情報を開示させる制度です。

これは、当然裁判所に付与された権限のため、調停という裁判所における手続きを利用する必要があるため調停の手続きに移行して行う必要があります。相手が財産開示に応じない場合、速やかに調停手続きへ移行させることも選択肢の1つと言えます。

また、多くの場合この手続きを踏まずとも、一方が要求すると調停では調停委員から財産の開示を要求されるため、相手が財産を開示する可能性は協議離婚に比べて遙かに高くなります。

 

 

 

別居をしているが、婚姻費用が支払われていない

夫婦には法律上、生活費を互いに分担し合わなければならないという義務が生じます。

そのため、離婚をせずに別居をしている場合、一般的に収入の少ない側は、収入の多いパートナーに対して生活費(婚姻費用)を請求することができるのです(婚姻費用分担請求)。

別居した後、時間が経過してから婚姻費用の申し立てを行った場合、婚姻費用の金額確定後、申立時までさかのぼって請求することができますが、別居開始時までさかのぼって請求することはできません。

そのため、別居開始と同時に婚姻費用分担請求の申し立てを行う必要があります。別居をしているが婚姻費用の申し立てを行っていない場合、早急に申し立て手続きを行う必要があります。

内容証明郵便にて婚姻費用の請求意思を明確にしておくことでも、以後の婚姻費用を支払わせることは出来ますが、調停申立てをすることが確実な方法と言えます。

 

 

 

親権について争いがあり、相手に子供の連れ去りの恐れがある

離婚調停や離婚訴訟で親権が争われている場合、子どもの意見を聞く方法として、家庭裁判所調査官による調査が行われることがあります。

あるいは、子どもの年齢にはかかわりなく、そもそも親権者として両親のどちらがふさわしいのか判断する目的で双方の生活環境についての調査を行うこともあります。

調査官とは、法律だけではなく心理学・社会学・教育学等の知識を有する裁判所の職員です。 調査官による調査は、特に必要性があると裁判所が判断した事案のみに限られますが、親権者としてどちらがふさわしいか実態がはっきりするため、調停に移行させたほうが良いケースも多いです。親権が争いになったケースや面会交流のうまくいかないケースなどは調停に参加してくることが多くなっています。

また、子どもが相手に連れ去られる可能性のある場合は、調停に移行させることで以後の連れ去りは親権取得への障害事由となるため相手への抑止力となります。

 

相手と連絡が取れない、または、毎日しつこく連絡が来る

相手がこちらの連絡を無視する場合、協議のしようがないため、調停へ移行させて裁判所の手続きに乗せることで、相手からの反応を得られるケースが多くあります。

相手が調停にも出席してこない場合、調停委員への心象が悪くなり、こちらに有利に離婚の話し合いが進むことになります。逆に、毎日しつこい連絡が相手からきている場合、調停へ移行し裁判所を介することが、相手への抑止力となります。

弁護士を代理人として付けると、以後本人同士の連絡は原則禁止されるため相手との連絡を取らなくて良いメリットがあります。

 

 

2. 離婚調停を弁護士に依頼するメリット

 調停では、調停委員が間に入るため、自分でも対応できそうだと考える方がいます。

確かに、裁判とは違い自分で進めることは可能ですが、「自分が望むように離婚の話し合い進めることが出来るか」というと、話は別です。

調停は、裁判のように書面主義ではなく、話し合いなので、調停当日にその場で的確な判断をし、相手との「交渉」をしていかなければなりません。初めて離婚する方が、裁判所の密室で調停員二人を相手に自らイニシアチブを握り、相手との交渉を進めていくことは極めて困難と言えます。

また、調停委員は、あくまでも話し合いを仲介するだけですので、こちらがどうしても訴えたい相手への不満など感情的な話を親身に聞いてくれる等いう訳ではありません。論点が整理されており、交渉力が強い方に優位に話し合いが進むケースが往々にしてあるのです。

そのため、自分に有利な条件で離婚を勧めたい場合、交渉のプロである弁護士に依頼したほうが確実になります。調停に同席してその都度アドバイスしてくれることはもちろん、本人の意図をくんで適切な交渉をしてくれます。

また、上で述べたとおり、相手との接触を不安な方は、以後相手との交渉を弁護士に一任できるというメリットもあり、相手を恐れている方の多くはそのような理由で弁護士を付けられています。

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執筆者
島武広 
島法律事務所 
代表弁護士(神奈川県弁護士会所属)

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