熟年離婚における年金分割

年金分割とは、婚姻期間中の夫婦双方の厚生年金に収めた掛け金を合算し、2分の1ずつ支払ったことにする制度です。
厚生年金掛け金は収入に比例するので、基本的には収入の少ない方の年金額が増えることになります。

概ね20年以上連れ添った夫婦の離婚である熟年離婚をお考えの方にとっては、老後に安定した生活を送るために、年金分割をきちんと行うことが重要です。
しかし、年金分割制度は複雑でわかりにくいものです。
そこで、ここでは年金分割制度の概要を踏まえたうえで、熟年離婚での年金分割について説明していきます。

将来もらえる年金そのものを分ける制度ではない
まず、年金分割は、将来の年金の受給額そのものを分けるのではなく、受給額を算定する基礎となる保険料納付実績を分けるものです。
また、自分自身に年金受給資格がなければ、年金分割をしたとしても年金を受給することはできません。

国民年金は対象とならない
また、年金分割の対象となるのは、厚生年金の保険料納付実績に限られます。
国民年金、基礎年金部分は対象になりません。

合意分割と3号分割

年金分割には合意分割と3号分割があります。

① 合意分割

合意分割とは、分割割合(按分割合)を夫婦の合意によって決めるものです。
分割割合の上限は、2分の1まで(50%以下)とされていますが、ほとんどの場合は2分の1で合意されることになります。
分割割合について夫婦間で合意ができないときは「審判」という手続きで裁判所に決定してもらうことができますが、この場合でも分割割合は2分の1と決定されることがほとんどです。

② 3号分割

3号分割とは、第3号被保険者の請求に基づき、第3号被保険者であった期間の標準報酬について、自動的に2分の1の割合で分割されるものです。
第3号被保険者は、専業主婦(夫)などの、第2号被保険者(サラリーマン、公務員など厚生年金保険の加入者)に扶養されている20歳以上60歳未満の配偶者のことです。
また、3号分割の手続きは、第3号被保険者だった人が単独で行うことができます。

3号分割は2008年4月に始まった制度であるため、2008年4月1日以降に納めた年金保険料のみが対象となります。
それ以前に納めた分について年金分割をする場合は、合意分割による必要があります。

熟年離婚と年金分割

結婚期間が長いため、若年層よりも年金分割の対象となる標準報酬が高額になっている傾向にあります。
また、熟年夫婦は、「夫が会社員・公務員で妻が専業主婦」というケースや、共働きでも妻のほうが、収入が少ないケースが多いです。

そのため、熟年離婚で年金分割をすると、多くの場合、妻がもらう年金額は増え、夫がもらう年金額は減るという影響が出ることになります。

なお、年金分割により将来もらえる年金がどの程度増減するかは、保険料納付実績により異なります。
具体的な金額については、50歳以上であれば年金事務所でシミュレーションをしてもらうことをおすすめします。
逆に言うと、計算は非常に複雑であり、日本年金機構しかその金額を出すことはできません。

専業主婦の場合

結婚してからずっと専業主婦だった方は、夫の厚生年金の保険料納付実績を原則として2分の1の割合で分割してもらうことができます。
現在専業主婦の方でも、結婚期間中に働いて厚生年金に加入したことがある場合、その期間における自分の標準報酬総額も年金分割の対象となることには注意が必要です。
正確な金額をお知りになりたい場合、事前に年金事務所でシミュレーションしてもらいましょう。

共働きの場合

自分の方が夫よりも標準報酬総額が多い場合、年金分割により自分がもらえる年金額が減る可能性もあるので注意しましょう。
増えない場合(減る場合)は、自分からは年金分割を請求するべきではありません。

また、以前は働いて夫よりも稼いでいたけれども、途中で専業主婦になったという方は、3号分割を利用することで有利になる場合もあります。

年金分割の手続きの流れ

① 情報通知書を入手する

「年金分割のための情報通知書」(情報通知書)とは、年金分割の対象となる標準報酬総額や按分割合の範囲など、年金分割を行うために必要な情報が記載された書類です。
年金分割のための情報通知書は年金事務所で請求できますが、そのために一定の資料が必要となります。
ただし、裁判所の手続では発行から1年以内のものしか利用できないため、取得時期は注意しましょう。公正証書を作成しての協議離婚であれば、後から情報通知書を取得しても大丈夫です。

② 協議で合意する

合意分割の場合は「年金分割の請求をすること」と「分割する場合の按分割合」を夫婦で合意する必要があります。
話し合いで合意ができた場合は、合意した旨を記載した書類(合意書)を作成するようにしましょう。
出来れば、公正証書を作成すべきといえます。
そうしないと日本年金機構の指定する書面の署名押印など、相手方の協力が必要となってしまいます。

③ 離婚調停で合意

離婚調停で離婚についての話し合いがされている場合は、その調停の中で年金分割についても話し合って合意をすることができます。

この場合、離婚調停が成立する際に作成される「調停調書」に年金分割の分割割合についても記載されることになります。
調停調書がある場合は、元夫婦のいずれか一方だけで手続きをすることができます。

④ 審判を得る

話し合いで合意ができなかった場合、通常は年金分割を請求する側が「審判」という手続きを申し立て、裁判官に分割割合を定めてもらうことになります。
審判や裁判で分割割合が定められた場合は、裁判所から審判書が出されますので、それを年金分割の請求手続きを行う際に提出(持参)することになります。

この場合も、元夫婦のいずれか一方だけで手続きをすることができます。

⑤ 年金事務所で手続きをする

年金分割の分割割合が決まったら、年金事務所に分割割合を明らかにする書類を持参して請求の手続きをします。
時効があるため離婚が成立したら早めに手続きに行くようにしましょう。

分割割合を裁判所で定めてもらった場合でも、必ず請求手続きに行く必要があります。
分割割合が決まるとひと安心してしまいますが、自動的に分割されることはありませんので忘れずに年金事務所に行くようにしましょう。

 

以上、熟年離婚の年金分割について述べてきました。
夫婦の働き方によっては、年金分割をしない方がよい場合、あえて3号分割のみ行った方がよい場合などがあります。
具体的にご自身がどうすればいいのかお知りになりたいときは、是非当事務所の初回無料相談をご利用ください。
事案に即したアドバイスをさせていただきます。

執筆者
島武広 
島法律事務所 
代表弁護士(神奈川県弁護士会所属)

当サイトでは、離婚問題にまつわるお悩みに対して、弁護士の視点で解説をしています。また、当事務所にて携わった事案のポイントも定期的に更新しています。地元横須賀で、「迅速な解決」を大切に代理人として事件の解決に向けて取り組んでいます。

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