離婚前に預金が引き出されていたらどのように扱われるのか?弁護士が徹底解説

1. 離婚前に預金が引き出されるトラブルとは

離婚の話し合い中や別居の直前になって、夫婦の一方が突然、共有の銀行口座から数百万円単位の多額の預金を引き出してしまうトラブルが頻発しています。
「相手が勝手にお金を引き出してしまったから、もう財産分与で半分もらうことはできないのではないか?」と不安になる方が非常に多いですが、結論から言えば、必ずしも泣き寝入りする必要はありません。
引き出された預金が「夫婦の共有財産」であったのか、それとも「個人の特有財産」であったのか、そして「いつ(別居前か別居後か)」引き出されたのかによって、その後の法的な扱いや取り戻せる可能性が大きく変わってきます。
相手の不当な財産隠しや使い込みを防ぐためには、預金の引き出しに対する正しい知識と対処法を身につけておくことが重要です。

2. その預金は「共有財産」か「特有財産」か

預金が勝手に引き出された場合、まずはその預金が夫婦のどちらの財産にあたるのかを確認する必要があります。

① 特有財産の場合

結婚前に貯めていた貯金、親からの相続や贈与で得たお金などは、夫婦の協力とは無関係に形成された「特有財産」となります。
もし引き出されたのが「相手の特有財産」であれば、そもそも財産分与の対象外であるため、文句を言うことはできません。
逆に、相手が「あなたの特有財産」を勝手に引き出した場合は、不当利得や不法行為として返還を請求することができます。

② 共有財産の場合

婚姻期間中に夫婦の協力によって築かれた財産は、たとえ夫(または妻)の単独名義の口座であっても、夫婦の「共有財産」となります。
共有財産は夫婦の双方に利用する権利があるため、一方が勝手に引き出したからといって直ちに「窃盗」や「横領」といった犯罪になるわけではありません。
しかし、離婚時の財産分与においては、公平に清算するための対象としてしっかりと考慮されることになります。

3. 「別居後」に預金が引き出された場合の扱い

財産分与において、分けるべき夫婦の財産を確定する基準となるタイミング(基準時)は、原則として「別居時」とされています。
これは、別居した時点で夫婦の経済的な協力関係が終了したとみなされるためです。
したがって、「別居後(別居日以降)」に相手が勝手に共有財産の預金を引き出した場合、財産分与の計算上は「引き出されなかったもの(別居時の残高がそのまま存在しているもの)」として扱われます。
例えば、別居時に1,000万円あった預金のうち、別居後に夫が勝手に500万円を引き出して使い込んでしまったとしても、財産分与の対象は「1,000万円」のままです。
妻は本来の取り分である500万円をしっかりと請求することができ、夫は「自分が先に取り分を使っただけ」として処理されます。

4. 「別居前」に預金が引き出された場合の扱い

問題になりやすいのが、離婚を切り出す直前や「別居前」に多額の預金が引き出されていたケースです。
別居前はまだ夫婦の共同生活が続いているため、引き出されたお金が家賃、食費、子どもの学費、医療費といった「夫婦の正当な生活費」として消費されたのであれば、財産分与の対象にはなりません。
しかし、離婚を予期して財産を減らす目的で、別居の数ヶ月〜数日前に数百万円を現金で引き出したり、別の口座に隠したりした場合はどうでしょうか。
相手が「生活費に使った」「ギャンブルで全部すった」と主張しても、短期間で使い切れないような不自然な多額の引き出しであり、領収書などの客観的な証拠で使途を説明できない場合には、裁判所は「そのお金は現金として手元に隠し持っているはずだ」とみなし、別居時の財産分与の対象に組み戻して計算してくれる可能性が高くなります。

5. 被害を防ぐために今すぐやるべき「証拠保全」

預金の引き出しトラブルに対抗するためには、何よりも「客観的な証拠」が命になります。
離婚や別居を切り出す前に、相手に気づかれないように以下の資料を確保しておきましょう。

・夫婦のすべての通帳のコピー(表紙だけでなく、数年分の入出金履歴がわかる中身も)
・インターネットバンキングの取引履歴画面のスクリーンショット
・給与明細や源泉徴収票
・証券口座や生命保険、退職金に関する資料

相手がすでに通帳を隠してしまったり、別居してしまったりしている場合でも、どこの銀行(支店名まで)に口座があるかさえ分かっていれば、後から弁護士を通じて取引履歴を調査することが可能です。

6. 生活費として引き出す場合の注意点

逆に、あなたが「別居後の生活費が不安だから」という理由で、家を出る前に夫婦の共有口座からお金を引き出したいと考えるケースもあるでしょう。
当面の生活費や引越し費用など、必要な範囲で引き出すこと自体は直ちに違法とはなりませんが、やり方を間違えると相手から「財産隠しだ」「窃盗だ」と激しく非難され、調停などで不利な立場に立たされる危険があります。
引き出す場合は、「いつ、いくら、何のために引き出し、実際に何に使ったのか」をレシートや家計簿で明確に記録し、全額を根こそぎ引き出すような極端な行動は避けるべきです。
また、別居後の生活費については、相手の預金を勝手に引き出すよりも、法的な権利である「婚姻費用(別居中の生活費)」として堂々と相手に請求する手続きをとるのが正攻法です。

7. お金を引き出されたら迷わず弁護士に相談を

離婚前に多額の預金が引き出された場合、当事者同士で「お金を返せ」「生活費に使っただけだ」と言い争っても、平行線をたどるだけで解決には至りません。
相手が財産を隠蔽している疑いがある場合や、預金の使い道について合理的な説明を拒否している場合は、速やかに離婚問題に強い弁護士に相談してください。
弁護士に依頼すれば、「弁護士会照会」や裁判所の「調査嘱託」といった強力な権限を使って、相手の隠し口座や過去の取引履歴を強制的に調査することができます。
さらに、不自然な引き出しがあったことを法的な論理で主張し、使い込まれたお金を財産分与の対象に組み戻すよう徹底的に交渉してくれます。
財産分与の請求には「離婚後2年(2026年4月以降に離婚した場合は5年)」という厳格な期限がありますが、時間が経つほどお金の追跡は難しくなります。
取り返しのつかない損をしないためにも、不審な預金の動きに気づいたら、一日も早く専門家の力を借りて大切な財産を守りましょう。
是非島・鈴木法律事務所初回無料相談をご利用ください。
離婚弁護士として事案に即した適切なアドバイスをさせていただきます。

執筆者
島武広 
島・鈴木法律事務所 
代表弁護士(神奈川県弁護士会所属)

当サイトでは、離婚問題にまつわるお悩みに対して、弁護士の視点で解説をしています。また、当事務所にて携わった事案のポイントも定期的に更新しています。地元横須賀で、「迅速な解決」を大切に代理人として事件の解決に向けて取り組んでいます。

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