DV・モラハラがあっても共同親権にしないとならないのか、弁護士が解説
1.はじめに:2026年から始まる離婚後の「共同親権」とは
2024年に民法改正案が成立し、2026年4月1日より離婚後の「共同親権」が導入されることになりました。
これまでは、離婚をすると父母のどちらか一方が親権を持つ「単独親権」しか認められていませんでした。
しかし、法改正の施行後は、父母の話し合い(協議)によって、離婚後も双方が親権を持つ「共同親権」を選ぶことが可能になります。
共同親権は、離婚後も両親がともに子育てに関わるべきであるという理念のもと、多くの海外の制度にも倣って導入が進められました。
しかし、このニュースを見て、「元配偶者からDVやモラハラを受けていたのに、離婚後も関わり続けなければならないのか」と強い不安や恐怖を感じている方は少なくありません。
結論から申し上げますと、DVやモラハラがあるケースにおいて、共同親権が強制されることはありません。
本記事では、DVやモラハラがある家庭において共同親権を拒否できる条件や、法的な判断基準、そして被害者が身を守るための対策について、弁護士が詳しく解説します。
2.DVやモラハラがある場合でも共同親権は強制されるのか?
「共同親権の導入によって、加害者である元配偶者と縁が切れなくなるのではないか」という懸念は、制度設計の過程でも繰り返し議論されてきました。
そのため、改正法では、DVや虐待のケースを共同親権の対象から明確に除外するためのルールが設けられています。
共同親権は、あくまで「離婚後も双方の親が子の養育に関わり続けることが、子のためになる」という前提に立っています。
しかし、配偶者や子どもに対して暴力や虐待がある場合、この前提そのものが成り立ちません。
加害者と被害者を親権を通じて結びつけ続けることは、被害者や子どもをさらなる危険や支配にさらすおそれがあります。
したがって、法律は無理を強いるものではなく、「子どもの安全」と「被害親の安全」を最優先するように設計されています。
DVやモラハラがあり、共同で親権を行うことが困難であると認められる場合には、単独親権を選ぶ道が制度上しっかりと確保されていますので、どうかご安心ください。
3.裁判所が必ず「単独親権」と定める条件(法的な例外規定)
離婚後の親権を共同親権にするか単独親権にするかは、まず父母の話し合いで決めますが、対立がある場合は家庭裁判所が判断を下します。
その際、家庭裁判所の判断基準は一貫して「子どもの利益」にあります。
改正民法(第819条7項)では、以下の事情がある場合には、裁判所は必ず父母の一方を親権者(単独親権)と定めなければならないと明記されています。
一つ目は、「父又は母が、子の心身に害悪を及ぼすおそれがあるとき」です。
過去に子どもへの身体的な虐待があったケースはもちろん、ネグレクト(育児放棄)や、子どもの前で配偶者に暴力を振るう「面前DV」も心理的虐待としてこれに含まれます。
二つ目は、「父母の一方が他の一方から身体に対する暴力その他の心身に有害な影響を及ぼす言動」を受けており、父母が協力して親権を行使することが困難なときです。
つまり、配偶者へのDVのおそれがあり、恐怖で相手の言いなりにならざるを得ないなど、対等な話し合いが機能しない関係性であれば、単独親権が選択されることになります。
これらに当てはまらない場合でも、共同親権にすることが子どもの利益を損なうと裁判所が判断すれば、単独親権が選ばれます。
4.身体的暴力がない「モラハラ」や「経済的DV」も考慮されるか
DVというと、殴る、蹴るといった目に見える身体的な暴力を思い浮かべる方が多いかもしれません。
しかし、裁判所が考慮する「暴力等」には、身体的なものだけでなく、言葉や態度による精神的な暴力も含まれます。
法条文にも「その他の心身に有害な影響を及ぼす言動」と明記されており、いわゆる「モラルハラスメント(モラハラ)」も該当します。
例えば、大声で怒鳴る、日常的に人格を否定する、無視をする、過度に束縛するといった行為は、被害者を萎縮させ、精神的に支配する深刻な暴力です。
また、生活費を渡さない、収入を独占するといった「経済的DV」や、交友関係や実家との付き合いを制限する「社会的隔離」なども、共同親権がふさわしくない事情として評価の対象になります。
このような精神的・経済的な支配を受けており、意見を言えない状態であれば、共同親権の前提である「協力関係」を築くことは不可能であるため、単独親権が認められる可能性が高いと言えます。
5.単独親権を勝ち取るために必要な「証拠」の集め方と工夫
モラハラや精神的・経済的DVは、身体的な暴力と違ってあざや傷跡が残らないため、裁判所に被害を認めてもらうには客観的な「証拠」が非常に重要になります。
「ただ性格が合わないだけ」「夫婦喧嘩の延長」と軽く見られないよう、被害の実態を裏付ける記録を残しておく工夫が必要です。
有効な証拠としては、暴言や脅しのやり取りが残るメールやLINEの画面、SNSのメッセージ履歴などが挙げられます。
相手の怒鳴り声や威圧的な会話を録音した音声データも強力な証拠となります。
また、暴言の内容やその時の恐怖感を、日付や時間とともに詳細に記録した日記やメモも、積み重ねることで信憑性を高めます。
第三者への相談記録も有効であり、警察や自治体の配偶者暴力相談支援センターに相談した履歴、心身の不調で心療内科を受診した際の診断書や医療記録も証拠になり得ます。
ただし、証拠集めにあたっては、相手を刺激しないよう、ご自身の安全を最優先に行うことが鉄則です。
何が証拠になるか分からない場合でも、自己判断でデータを消してしまわず、まずは専門家に見てもらうことをお勧めします。
6.「共同親権を条件に離婚する」という相手の要求への対処法
DVやモラハラの加害者は、離婚を切り出された際に、自分に有利な条件を引き出すための取引を持ちかけてくることがよくあります。
「共同親権に同意するなら離婚してやる」「親権をこちらにもよこさないなら養育費は一切払わない」といった脅し文句です。
しかし、このような条件には絶対に応じてはいけません。
「早く逃げたい」「とにかく離婚だけ成立させたい」という一心で共同親権に合意してしまうと、離婚後も進学や医療などの重要事項を決めるたびに加害者の同意が必要となり、支配から抜け出せなくなってしまいます。
一度共同親権で合意してしまうと、後から「やはり単独親権に変更してほしい」と申し立てても、手続きのハードルが高く、時間と労力がかかります。
相手が不当な条件を突きつけてきた場合は、当事者同士で話し合おうとせず、すぐに弁護士に介入してもらい、法的な手続き(調停や審判)を通じて安全に単独親権を勝ち取るルートを選ぶべきです。
7.共同親権になった場合でも単独で決められる「急迫の事情」とは
万が一、裁判所の判断などで共同親権になった場合でも、すべての決定事項について元配偶者の同意が必要になるわけではありません。
改正法では、一方の親が単独で親権を行使できる例外的なケースが明確に定められています。
一つ目は、「監護及び教育に関する日常の行為」です。
食事や服装の選択、軽い病気の通院、習い事の決定など、子どもの心身に重大な影響を及ぼさない日常的な事柄は、一緒に暮らしている親が単独で決めることができます。
二つ目は、「子の利益のため急迫の事情があるとき」です。
例えば、元配偶者からのDVや虐待から子どもを守るために緊急で子どもを連れて別居(転居)する場合などは、相手の同意を得ずに単独で行うことが法律上認められています。
ほかにも、緊急の手術が必要な場合など、相手の同意を待っていては子どもの命や不利益に関わる事態においては、単独での決断が可能です。
8.すでに離婚している場合の「共同親権への変更」はどうなる?
2026年4月に改正法が施行されたからといって、すでに単独親権で離婚が成立している家庭が、自動的に共同親権に切り替わることはありません。
単独親権から共同親権へ変更するためには、元配偶者が家庭裁判所に「親権者変更」の申立てを行う必要があります。
もし、DV加害者である元配偶者から共同親権への変更を求められたとしても、焦る必要はありません。
裁判所は変更が子どもの利益にかなうかどうかを厳格に審査し、離婚時にDVがあった事実や、現在も対等な関係が築けていない状況が認められれば、共同親権への変更は却下されます。
また、養育費を長期間にわたり不当に支払っていないような場合も、変更は認められにくくなります。
将来的な変更申立てのリスクを防ぐために、これから離婚をする方は、「DVがあったこと」を公的な記録(調停調書や公正証書など)にしっかりと残しておくことが重要です。
9.まとめ:一人で抱え込まず、弁護士などの専門家に相談を
共同親権の導入は、社会的に大きな変化をもたらしますが、DVやモラハラの被害者を無理やり加害者と結びつけるための制度ではありません。
子どもの安全と被害者の安全を守るために、単独親権を選択する道は法律上明確に保障されています。
しかし、加害者の巧妙な支配を抜け出し、モラハラや経済的DVを証明して家庭裁判所に正当な判断を下してもらうためには、専門的な知識と戦略が不可欠です。
被害者ご自身が一人で加害者と対峙し、新しい複雑な法律の仕組みを使いこなすのは、極めて困難であり危険でもあります。
弁護士を代理人に立てることで、加害者と直接顔を合わせたり連絡を取ったりする必要がなくなり、安全を確保しながら手続きを進めることができます。
「証拠がないから無理かもしれない」「相手が怖い」と諦めてしまう前に、まずは離婚問題やDV事案に強い弁護士の無料相談などを活用し、あなたとお子さんの未来を守るための第一歩を踏み出してください。
是非島・鈴木法律事務所初回無料相談をご利用ください。
親権問題を多数扱ってきた経験とノウハウから、事案に即した適切なアドバイスをさせていただきます。
島・鈴木法律事務所
代表弁護士(神奈川県弁護士会所属)
当サイトでは、離婚問題にまつわるお悩みに対して、弁護士の視点で解説をしています。また、当事務所にて携わった事案のポイントも定期的に更新しています。地元横須賀で、「迅速な解決」を大切に代理人として事件の解決に向けて取り組んでいます。
初回相談は無料でお受けしておりますので、お悩みの方は、お一人で抱え込まず、ぜひ一度専門家にご相談ください。|弁護士紹介はこちらをクリック>>
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