確定拠出年金は財産分与の対象となる?対象となる要件と評価方法を解説
1.はじめに:確定拠出年金と離婚の関係
近年、老後の資産形成を目的として「確定拠出年金」に加入する方が増加しています。離婚を考えた際、この確定拠出年金が財産分与の対象になるのか、それとも年金分割の対象になるのかと疑問に思う方も多いでしょう。
結論から申し上げますと、確定拠出年金は「年金分割」の対象にはならず、「財産分与」の対象となります。
本記事では、確定拠出年金がなぜ年金分割ではなく財産分与の対象になるのか、また、その評価方法や注意点について詳しく解説します。
2.確定拠出年金と年金分割の違い
まず、日本の年金制度の構造について確認しましょう。日本の年金制度は、よく「階建て」に例えられます。
・1階部分: 国民年金(基礎年金)
・2階部分: 厚生年金
・3階部分: 確定拠出年金、国民年金基金などの私的年金
離婚時に配偶者間で年金を分割する「年金分割」制度の対象となるのは、このうち2階部分にあたる「厚生年金」のみです。
したがって、3階部分である確定拠出年金は年金分割の対象外となります。
確定拠出年金は、加入者自身が掛金を拠出し、資産運用の成果によって将来の支給額が変わるという性質を持ちます。
つまり、加入者が自ら「財産を形成する」性質を持つため、年金分割ではなく財産分与の対象として扱われるのです。
3.確定拠出年金の種類と財産分与の考え方
確定拠出年金には、大きく分けて「企業型(企業型DC)」と「個人型(iDeCo)」の2種類があり、財産分与における扱いが少し異なります。
(1) 企業型確定拠出年金(企業型DC)
企業が退職金制度の一環として掛金を拠出する企業型DCは、「退職金の前払い」という性質を持っています。
退職金は夫婦の協力によって形成された財産とみなされるため、企業型DCは原則として財産分与の対象となります。
(2) 個人型確定拠出年金(iDeCo)
個人が自ら掛金を拠出するiDeCoについては、退職金の前払い的な性格はないため、財産分与の対象となるかどうかは見解が分かれています。
しかし、掛金が婚姻期間中の夫婦の共有財産から拠出されている場合は、預貯金などと同様に財産分与の対象となる可能性が高いと考えられています。
4.確定拠出年金の財産分与における評価方法
確定拠出年金を財産分与の対象とする場合、その金額(評価額)をどのように算出するかが問題となります。確定拠出年金は、受給額が確定しているか未確定かによって評価方法が異なります。
大前提として、財産分与の対象となるのは「婚姻期間中に形成された財産」に限られます。
そのため、結婚前や別居後(離婚前に別居している場合)に拠出された掛金は対象外となります。
(1) 受給額が確定している場合
すでに受給が始まっている、あるいは満期を迎えて受給額が確定している場合は、計算が比較的容易です。
【計算式】
確定している受給額 ×(婚姻期間 / 掛金を拠出した全期間)
例えば、確定受給額が1000万円、全掛金拠出期間が40年、そのうち婚姻期間が10年の場合:
1000万円 × (10年 / 40年) = 250万円
この250万円が財産分与の対象財産となり、原則としてこれを夫婦で2分の1ずつ(125万円ずつ)分け合うことになります。
(2) 受給額が未確定の場合(積立途中など)
確定拠出年金は運用実績によって将来の受給額が変動するため、積立途中など受給額が未確定の場合は評価額の算出が困難です。
この場合、基準時(離婚時または別居時)における年金資産の残高(評価額)を基準とすることが一般的です。
現在の資産残高は、運営管理機関(銀行や証券会社)に問い合わせるか、定期的に送付される「お取引状況のお知らせ」などで確認できます。
算出した基準時の残高に対し、婚姻期間の割合を掛けて対象額を求めます。
5.財産分与が認められないケース(受給の確実性)
企業型確定拠出年金であっても、必ず財産分与の対象になるとは限りません。過去の裁判例では、企業型DCが財産分与の対象外とされたケースもあります(名古屋高裁判決平成21年5月28日)。
この裁判例では、以下の事情から財産分与(清算的財産分与)の対象とは認められませんでした。
・定年まで15年以上あり、将来受給できるかどうかの確実性(蓋然性)が明確ではない。
・運用によって金額が変動するため、別居時の評価額を算出することが困難である。
このように、満期や定年退職が間近に迫っており受給が確実視される場合は財産分与の対象となりやすいですが、若年層などで受給がかなり先になる場合は、対象外と判断される可能性が高くなります。
6.財産分与の方法と注意点
確定拠出年金は、原則として60歳になるまで引き出すことができません。
そのため、財産分与として金額が確定しても、手元に分割する現金がないという問題が生じます。
他に預貯金などの十分な財産があれば、その中から調整して分与額を支払うことができます。
もし他に財産がない場合は、将来確定拠出年金を受給した際に支払うといった約束をすることになります。
将来の支払いについて約束する場合は、万が一不払いが生じた場合に備え、公正証書などの公文書として取り決めを残しておくことが重要です。
7.まとめ
確定拠出年金は年金分割の対象外であり、財産分与の対象として扱われます。企業型は退職金の前払いとして原則対象となりますが、個人型は婚姻中の資金から拠出された場合に考慮される可能性があります。
しかし、確定拠出年金は運用によって金額が変動し、原則60歳まで引き出せないため、評価額の算出や分与の方法が複雑になります。特に、定年まで期間がある場合は受給の確実性が問題となり、対象外とされるケースもあります。
確定拠出年金を含む離婚時の財産分与は、専門的な判断が必要となることが多いため、専門知識を持つ弁護士に相談し、適切なアドバイスを受けることをお勧めします。
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島・鈴木法律事務所
代表弁護士(神奈川県弁護士会所属)
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