離婚の財産分与で財産隠しをされたら
・ もくじ ・
- 1 財産分与の基準時について
- 2 財産を保全する方法
- 3 通帳の開示を求める
- 4 隠し口座の見つけ方
- 5 ネット銀行に財産を隠している場合
- 6 貸し金庫に財産を隠している場合
- 7 現金を隠している場合
- 8 離婚の財産隠しは罪?
- 9 まとめ
- 10 財産分与についての関連記事はこちら
- 10.1 財産分与を弁護士に依頼するメリット
- 10.2 退職金の財産分与
- 10.3 離婚において不動産を財産分与するときの注意点
- 10.4 共働き夫婦の財産分与について
- 10.5 夫婦間のお金の貸し借りと離婚について
- 10.6 子ども名義の財産は財産分与の対象になるか
- 10.7 確定拠出年金は財産分与の対象になるのか
- 10.8 財産分与で満足するためのポイント
- 10.9 財産分与に含まれる対象を知りたい方へ
- 10.10 財産分与の対象である資産を使い込まれた際の対処法
- 10.11 財産分与の相場
- 10.12 財産分与をしたくない方へ
- 10.13 離婚の財産分与で財産隠しをされたら
- 10.14 離婚の財産分与で財産隠しをされた方へ
- 10.15 離婚の財産分与には税金がかかるのか
- 10.16 離婚時の財産分与の請求期限
- 10.17 高額収入世帯の財産分与について
- 10.18 年収2000万円以上の場合の養育費・婚姻費用について
いざ離婚がまとまっても、相手方が自分の財産を隠しているとおもったら、どうすればよいでしょうか。
自分では何も出来ないと言いなりになりますか?多くの方がそんなことは受け入れられないかと思います。
ここではそんな方が泣き寝入りしなくて済むようにお話使用と思います。
財産分与の基準時について
財産分与の基準時として、現時点を基準とするという場合と別居時を基準とするという場合とがあり、この点について、過去の裁判例も分かれています。
相談者の方のお話ですと、15年以上前に別居されて生計も別になったとのことですので、別居時の財産を基準として分与することになる可能性が高いと思います。
相談者の方は現時点での全財産について、半分することを希望されているようですが、別居時の財産を半分することになるでしょう。
ただし、これまで婚姻費用(生活費のこと)を10年間支払ってもらっていないということなので、その未払分を財産分与として清算の対象にできる可能性があります。
財産を保全する方法
財産の保全処分としては、3つ方法が考えられます。
相談者の方も言及されている調停前の仮処分
これは調停委員会が職権で行う仮処分ですが、調停の申立てを行った申立人が職権発動を促すことはできます。
ただち、強制力がありませんので、実効性はあまりないでしょう。
審判前の保全処分
この処分には、調停前の仮処分と異なり、強制力がありますので実効性は確保できます。
しかし、これは審判を申し立てるのと同時に行う必要がありますので、財産分与の審判を申し立てる必要がありますが、相談者の方はいまだ離婚が成立していませんので、次の民事保全手続を利用することになると思います。
民事保全手続
これは財産処分を当面の間禁止する仮差押えを行い、相手方が財産を処分するのを防ぐことになります。
財産を保全する方法として、この3つがありますが、これらはいずれも対象財産が判明している場合に取る手段となります。
すなわち、そもそも、夫が財産を隠している場合、保全することができません。
そこで、以下では、どのようにして、隠し財産を調査するかについて、解説します。
通帳の開示を求める
口座の取引履歴ご本人が相手に直接財産開示を求めても、相手が「貯金を渡したくない」と考えて、素直に開示してくれない可能性があります。
そこで、弁護士を通じて相手方に開示を求めるとよいでしょう。
相手が開示してくれない場合、経験豊富な離婚専門の弁護士であれば、開示の必要性について説得してくれると思われます。
隠し口座の見つけ方
相手がすべての口座情報を開示しない場合、隠し口座をどのようにして見つけるのかがポイントとなります。
様々な方法を検討すべきですが、隠し口座をもっている可能性が高い銀行に対して、弁護士照会によって、相手の口座の有無を調査するという方法があげられます。
例えば、自宅に銀行から封書や葉書が届いていたのであれば、その銀行に口座を持っている可能性が高いと考えられます。
また、自宅や勤務先のそばの銀行なども利用している可能性があるでしょう。
さらに、既に開示されている口座の取引履歴の中に、隠し口座の銀行名が記載されている可能性もあります。
例えば、既に開示されているA銀行の口座の取引履歴の中に、B銀行口座への送金履歴が残っていれば、B銀行に口座がある可能性があります。
なお、金融機関によっては弁護士照会では口座情報を開示しない場合も考えられます。
このような場合は、裁判所を通じて調査嘱託を申し立てることを検討します。
ネット銀行に財産を隠している場合
ネット銀行ネット銀行の場合、通帳がないため、通常の口座と比べて調査が難航する傾向です。
しかし、ネット銀行であっても、口座開設時には自宅にカードなどが送付されてくるはずです。
また、その他の利用状況などの書類が届いていると考えられます。
さらに、上記と同様に、既に開示されている銀行口座の取引履歴の中に、ネット銀行口座への送金履歴が残っていれば、そのネット銀行に口座がある可能性があります。
貸し金庫に財産を隠している場合
相手が貸し金庫に財産を隠している場合、相手が普段取引をしている(預貯金がある)銀行のサービスを利用している可能性が高いと思われます。
そこで、その銀行に対して、弁護士照会や調査嘱託を行い、財産の有無を調査するという方法が考えられます。
現金を隠している場合
現金隠し現金を隠している場合は、弁護士照会等の方法を取ることができないので、調査が難しいと考えられます。
しかし、このような場合でも、口座の不自然な点を見つけることで、財産分与を主張ができる場合があります。
例えば、口座から100万円などの高額な引き落としがある場合、その使途について、釈明を求めます。
相手から、合理的な説明がなされれば問題はありませんが、説明ができない場合、財産隠しの可能性が高いといえるでしょう。
このような場合、当該100万円を財産分与の対象とすべきであると主張することが考えられます。
離婚の財産隠しは罪?
相手が夫婦の共有財産を隠している場合、理屈の上では、窃盗罪や横領罪が成立する可能性があります。
しかし、刑法には、親族相盗例という規定があり、夫婦の場合、窃盗罪や横領罪が成立する場合でも刑が免除されます(刑法244条1項)。
参考:刑法|電子政府の窓口
したがって、刑事責任を問うことはできません。
もちろん、財産を隠すという行為は、道徳上は非難される行為です。
また、財産を隠したりすると、相手の納得が得られず、裁判となり、解決まで長期化するおそれがあります。
これは夫婦双方にとって負担となります。
したがって、財産隠しの疑いがある場合、双方とも誠実に開示すべきであることを伝えるなどして、不毛な争いとならないようにすべきです。
まとめ
以上、離婚における財産隠しの事案について、実際の相談例をもとに詳しく解説しましたがいかがだったでしょうか。
財産隠しがある場合、まずは対象となる財産を調査しなければなりません。
現金や預金などの流動性が高い資産については、調査が難しい場合があります。
また、調査にあたっては、弁護士照会や調査嘱託などの方法を検討しなければならないケースもあります。
そのため、離婚問題に精通した弁護士にご相談されながら、調査を進めていかれることをおすすめいたします。
専門の弁護士であれば、隠し財産を調査し、適切な財産分与を受けるために適切な助言をしてくれるでしょう。
この記事が、離婚の財産分与でお困りの方にとって、お役に立てば幸いです。
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島法律事務所
代表弁護士(神奈川県弁護士会所属)
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