過去の不倫について慰謝料請求は可能か

1 消滅時効

不倫を理由とする慰謝料の請求権は、民法709条が定めている不法行為に基づく損害賠償請求権のひとつです。

この不法行為に基づく損害賠償請求権は、借金などの他の金銭の請求権と同様に消滅時効の対象となり、民法724条が2つの消滅時効を定めています。

(1)3年の消滅時効

不倫を理由とする慰謝料請求権は、「損害及び加害者を知った時から3年間行使されなかった」場合に消滅時効が完成します。

損害と加害者の両方を知らなければなければ消滅時効は進行しません。

①損害を知った時

判例は、損害を知ったというためには「被害者が損害を現実に認識したとき」としています(最高裁判所平成14年1月29日民集56巻1号218頁)。

不貞の慰謝料請求では具体的な不貞行為があったということを認識したときが該当します。

②加害者を知った時

加害者を知った時について判例は、「被害者において加害者の氏名、住所を確認するに至つた時」であると判断しています(最高裁判所昭和48年11月16日民集27巻10号1374頁)。

「配偶者が不倫していることは明らかだが、その相手の氏名・住所はわからない」というケースでは、何かしらの経緯で不倫の事実に気づいたとしても、消滅時効は進行しないといえます。

(2)20年の消滅時効

不倫の慰謝料請求権は、「不法行為の時(不貞行為の時)から20年間行使されなかった時」にも消滅時効が完成します。

こちらの消滅時効は、被害者が「損害及び加害者を知っていたかどうか」を問わずに、不貞行為から単純に20年が経過したということで完成するものです。

2 不倫発覚から3年過ぎてからの請求

不倫が発覚した場合でも、夫婦関係を壊したくないなどの配慮から慰謝料請求をすぐにしないことも多々あり、しばらくたってから「やっぱり許せない」と請求することにしたという方もいらっしゃいます。

3年経過していなければよいのですが、3年経過してしまっている場合どうなるでしょうか。

(1)消滅時効の援用

不倫慰謝料の消滅時効は、慰謝料請求権を失わせるためには、慰謝料の支払い義務を負う者(不倫相手・配偶者)が「消滅時効の援用」をする必要があります(民法145条)。

相手が時効をよくわからずに援用しなければ請求は可能です。

ただ、相手に弁護士がつけばあっという間に援用されてしまうと思います。

(2)離婚慰謝料

過去の不倫を理由に離婚に至ったという場合には、離婚による慰謝料を配偶者に請求できる可能性があります。

離婚を原因とする慰謝料請求の消滅時効は、離婚の時が起算日となるからです。

ただ、長期間が経過してしまったことで、相手を許したと評価される場合もあり、慰謝料が認められない・減額される可能性があります。

3 間もなく消滅時効が完成する場合の対処法

消滅時効の完成が間近に迫っていても、正しく対処することで時効の完成を防ぐことができます。

(1)裁判を起こす

慰謝料請求訴訟を提起した場合、裁判が終了するまでの間の時効の完成をストップさせることができます(民法147条)。

(2)内容証明郵便を送付する

慰謝料請求の時効は、相手方に対して催告を行うことで完成を6ヶ月遅らせることができます(民法150条1項)。

後で言った言わないにならないようにするため、実務の上でも、時効完成を阻止するために催告をする場合には、内容証明郵便を用いることが一般的です。

以上過去の不倫についての慰謝料請求について述べてきました。

やはり、鉄は熱いうちに打て、ではありませんが長い時間放置しておくのは適切ではないと思います。

ただ、放置したからと言って諦めるかどうかは事案によるため、まずは専門家である弁護士に相談することをお勧めします。

是非当事務所の初回無料相談をご利用ください。

今できうる最良の手段や選択肢を提示させていただきます。

執筆者
島武広 
島法律事務所 
代表弁護士(神奈川県弁護士会所属)

当サイトでは、離婚問題にまつわるお悩みに対して、弁護士の視点で解説をしています。また、当事務所にて携わった事案のポイントも定期的に更新しています。地元横須賀で、「迅速な解決」を大切に代理人として事件の解決に向けて取り組んでいます。

初回相談は無料でお受けしておりますので、お悩みの方は、お一人で抱え込まず、ぜひ一度専門家にご相談ください。|弁護士紹介はこちらをクリック>>

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