セックスレスを理由に慰謝料請求できるか

セックスレスを理由に離婚したいと考える方から相談を頂くことがよくあります。

皆さん、セックスレスで離婚ができるのか、慰謝料を請求できるか、不安に思っていらっしゃいます。

では、セックスレスで離できるでしょうか、慰謝料を請求できるでしょうか。

先に答えを言うと、夫婦のどちらか一方が正当な理由なく性交渉を拒否している場合には離婚事由となり、さらに、100万円程度の慰謝料を請求できる場合があります。

セックスレスは離婚理由になるのか

セックスレスであっても夫婦がお互いに離婚に合意していれば離婚することができます。

話し合いで折り合いがつかない場合は、調停、裁判に移行しますが、裁判の場合では以下の民法上の法的離婚事由が必要です。

配偶者に不貞行為があったとき

配偶者から悪意の遺棄があったとき

配偶者の生死が3年以上明らかでないとき

配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき

その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき

セックスレスの場合では、その他婚姻を継続し難い重大な事由があるときに当てはまるかが問題になります。

セックスが長期間ないことより、夫婦関係を継続していくことが難しい場合に離婚が認められます。

大体1ヶ月以上パートナーと何らかの性愛的コンタクトがないことを、セックスレスと捉えます。

セックスレスが原因の慰謝料請求

セックスレスでは、慰謝料請求ができるケースと慰謝料請求ができないケースがあります。

判例では下記のケースで慰謝料が認められています。

①　性交渉を拒否する中、ポルノビデオで自慰行為をする夫に対し妻が離婚と慰謝料を求めた事案　慰謝料120万円

（福岡高等裁判所　平成5年3月18日判決）

②　結婚してから約4年間の同居期間中、1度も性交渉がなく、夫が性的不能であることを隠して結婚した事案　慰謝料200万円

（京都地方裁判所　昭和62年5月12日判決）

③　結婚した当初は性交渉があり、結婚して子供もできたが、その後性交渉を拒否するようになり、夫は別の男性と同性愛の関係を持っていた事案　慰謝料150万円

（名古屋地方裁判所　昭和47年2月29日判決）

セックスレスで離婚した場合の慰謝料相場

慰謝料の金額はセックスレスの状況によって大きく変わり、相場は数十万～100万円程度と低額になります。

・婚姻期間

・相手の年収

・相手の職業

・子供の有無

などで金額が決まります。

・セックスレスの期間が長い（3年以上）

・結婚後に一度もセックスをしていない

・セックスを拒絶している側が不倫している

・セックスを拒絶された側が初婚

・セックスレスに加えてモラハラやDVがある

・婚姻期間が長い

・未成年の子供がいる

・相手がセックスをするために努力をしていない

等の場合には増額される可能性があります。

セックスレスで慰謝料を請求には証拠が必要

セックスレスを理由として、配偶者へ慰謝料を請求するにはその事実を裏付ける証拠が必要です。

証拠としては、お互いの生活状況を記したメモ、日記、メールでの性交渉の記録などが役立ちます。

セックスレスで慰謝料請求する手続

セックスレスで慰謝料を請求する場合には

• 離婚協議
• 離婚調停
• 離婚裁判

の順で行うことになります。

離婚協議

まずは、離婚協議で慰謝料を請求していきます。

相手が合意すれば支払ってもらえます。

話し合いで合意ができれば合意書を作成します。合意書は公正証書にしておくのが安心です。

合意書と公正証書の大きな違いは強制執行可能かどうかにあります。

公正証書をもとに裁判所で強制執行の申立てをすると直ちに相手の財産を差し押さえることができます。

離婚調停

話し合いで合意できない、話し合いに応じてくれない場合は、家庭裁判所に離婚調停を申し立てます。

調停では、調停員が間に入り、慰謝料や離婚について話し合います。

調停はあくまで話し合いであり、調停員はどちらの味方もしないことに注意しましょう。

離婚裁判

調停でも折り合いがつかず、調停不成立の場合は裁判を申し立てます。

離婚裁判では、裁判所がすべての判断をするため、セックスレスの事実を立証する証拠が何より大切です。

裁判は書面主義のため、ご自身だけで裁判を戦うことは難しいといえます。

離婚裁判は弁護士に依頼することで裁判の手続を任せられ、代理人として裁判で主張・立証を行うことができます。

以上、セックスレスによって慰謝料を請求できるかについて説明してきました。

実際は、セックスレスを立証することもなかなか難しく、相手もすぐに離婚を納得せず、ましてや慰謝料を請求となると簡単にはいきません。

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