熟年離婚の財産分与
熟年離婚とは概ね20年以上連れ添った夫婦の離婚をいいます。
財産分与とは、婚姻後形成した財産を2分の1ずつ分けることをいいます。
結婚後築いた財産は、名義がどちらかになっていても、夫婦の協力があって形成されたとみなされるため、財産分与の対象とされるのです。
熟年離婚の場合、財産が多くなる傾向にあり、財産分与により得られる財産も多くなることが殆どといえます。それゆえ、知識もなくなんとなく行ってしまうと後で後悔することにもなりかねません。
ここでは、少しでも皆さんのお力になれるように説明していきます。
財産分与の金額の統計
熟年離婚では、司法統計によると約半数の財産分葉額が600万円以上であり、1000万円以上の件数も3割を超えています。
これに対して、全世代では、600万円以上は3割、1000万円以上は2割弱となりますので、熟年離婚の場合は財産分与の金額が高額化する傾向にあることがわかります。
専業主婦の場合
専業主婦の方でも、当然に結婚生活において取得したものであれば、原則としてその半分の分与を受けることができます。
共働きの場合
当然に双方の財産が結婚後に取得したものであれば基本的に財産分与の対象となります。
そのため、自己名義の財産の方が相手名義の財産よりも多い場合は、相手から財産分与を請求され、自己名義の財産を相手に分与する可能性があるので注意しましょう。
相手が何も言わないのであれば、財産分与をしないという手もあります。
いずれにしても、夫婦の財産をもれなくリストアップし、それぞれの価値を調べ、お互いの財産総額を把握しましょう。
相手が財産分与を請求してきた場合は、損をしないように適切に進めていくことが大切です。
また、共働きの場合、持ち家が妻と夫の共有名義になっていたり、ペアローンを組んでいたり、妻が住宅ローンの連帯保証人になっているケースもあります。
その場合、持ち家を分与する際に名義変更や連帯保証人の変更が必要になることもあるので注意しましょう。
持ち家について
熟年離婚をお考えの方には持ち家があることも多いと思いますので、持ち家はどうなるかについて解説していきます。
結婚後に購入した自宅(持ち家)は、名義を問わず夫婦の共有財産となるため、財産分与の対象となります。
持ち家の分け方には、大きく次の3つがあります。
① 夫が取得する
② 妻が取得する
③ 売却する
いずれかを選択することになります。
住宅ローンが残っている場合
住宅ローンが残っている場合には基本的には持ち家の時価からローンの残額を差し引いた金額を持ち家の評価額とし、これが財産分与の対象となると考えられます。
現在の不動産価値が3000万円で住宅ローンが2500万円残っているなら、価値は差額の500万円となります。
オーバーローンの場合
ローン残高が持ち家の時価を上回る状態をオーバーローンといいます。
例えば、不動産価値が1500万円、住宅ローンが2000万円残っている場合、価値はマイナス500万円となります。
プラスの財産よりもマイナスの財産の方が多い場合、財産分与の対象にはなりません。
分けるべき財産がないからです。
この場合、不動産は財産分与から外され、住宅ローン債務者がそのまま負債を返済していき、不動産にも居住することが多いです。
オーバーローンの物件は、売却する際、債権者である銀行等の承諾が必要です。
承諾をしてもらうには、通常の場合、売却金額との差額を一括で銀行に返済する必要があります。
ですから、その差額を用意できない場合、そのままどちらかが住み続けるしかないのです。
ただし、住宅ローンと不動産を引き取る側に、その他財産分与の対象となる財産があれば、住宅ローンのオーバーローン分を差し引くことができます。
先の例ですと、500万円のオーバーローンがあるため、その他預金などを500万円持っているのであれば、財産分与する財産は0円となります。
ここを検討せずにただもらえるものと思って財産分与を請求すると、単に自分の財産を半分相手に支払うということも起こり得ますので注意してください。
住宅ローンが残っていない場合
住宅ローンが残っていない場合は、持ち家の時価が財産分与の対象となります。
したがって、売却する場合は売却代金を原則として2分の1ずつに分け合うことになります。
夫婦どちらかが取得する場合、取得する側が取得しない側に持ち家の時価の2分の1に相当する代償金を渡すことになります。
持ち家がある場合は、専門の弁護士に相談することをおすすめします。
事案ごとに対応が異なってくるのであり、対応を間違えると想定したものと全く異なる離婚条件となるがあります。
是非専門家である弁護士のアドバイスを受けて、慎重に手続を進めてください。
財産分与の流れ
財産分与は共有財産をリストアップして財産分与一覧表を作成することから始まります。
離婚時に存在した財産が対象となりますが、離婚前に別居が開始されている場合は別居時に存在した財産が対象となります。
独身時代からの預貯金や、贈与や相続により取得した財産、明らかに一方の専用品といえるものは各自の特有の財産として除きます。ただし、特有財産であることを資料により立証する必要があります。
まだ、別居していないのであれば、今のうちに相手の財産を可能な限り調査することが非常に重要になってきます。離婚の話を切り出す前に調べを進めるようにし、相手名義の預金通帳や保険証券などは写真やコピーを残しておくとよいでしょう。
財産分与一覧表に記載した財産の価額についても調査しましょう。
預金などはそのまま金額を記載すればよいですが、不動産、自動車、高価な動産(宝石、腕時計など)は価値がいくらか調べる必要があります。
価値がわかれば総額を2分の1ずつ分けることが殆どとなります。
家庭裁判所の実務では、共有財産の取得には夫婦で同程度の貢献があったものとして、原則的に2分の1ずつ分け合うのが公平と考えられています。
余程の事情がない限り、この割合は変わりません。
然したる事由もないのに2分の1を拒まれたら、調停、裁判と進んでいけば、2分の1になりますので、手続を進めていくことで2分の1ずつ分けることを実現できます。
また、早期解決に拘るのであれば、弁護士に依頼することも1つの方法です。
裁判所に行けば2分の1ずつ分けることになること、拒んでもいつかは認められてしまうことなどを伝え、説得してくれる可能性があります。
財産分与は、①協議による合意、②調停手続、③裁判手続のいずれかで決定されます。
まずは当事者同士で話し合い(協議し)、合意することを目指します。
当事者同士での話し合いで決められなかった場合は、調停手続に進むことになります。
調停にて裁判所で話し合っても合意に至らなかった場合は裁判手続に進みます。
調停手続や裁判手続は時間がかかり、柔軟な解決も難しいといったデメリットがあるので、できる限り協議による合意を目指すべきです。
ただし、当事者同士で冷静に話し合うことが難しい場合や、負担になる場合も多いので、弁護士に代理人として交渉してもらう方法(代理交渉)をおすすめします。
弁護士が相手と交渉するので、早期に適切な解決が図れるうえ、精神的・肉体的な負担も軽減できます。
調停手続は次善の策として利用を検討するとよいでしょう。
そうはいっても、どうしても話し合いがまとまらない、特に相手が理不尽な主張を繰り返している場合などは、調停、裁判に移行する覚悟が必要です。
裁判については、完全な書面主義のため。弁護士に依頼することが不可欠です。
調停は自分で行うこともできますが、調停委員が上からものを言って話を聞いてくれない、結局話し合いのため、相手が理不尽な主張を繰り返すことがあります。
可能な限り弁護士に依頼すべきといえます。
まとめ
熟年離婚の財産分与について述べてきました。
この内容を知っているだけでも、随分違うと思います。
ただ、熟年離婚の財産分与は、今後の生活をするために非常に重要なものであり、金額も高額となることが多いため、弁護士に相談・依頼することが必要です。
ご自身で行ったために失敗して、不公平な条件になったとしても、ハンコを押してしまったら覆すことはできませんので。
是非当事務所の初回無料相談をご利用ください。
事案に即したアドバイスをさせていただきます。
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島法律事務所
代表弁護士(神奈川県弁護士会所属)
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