子どもの親権を取り戻したい方へ

離婚時相手側に親権を譲ったが、やはり親権を取り戻したいと考える方が多く相談にいらっしゃいます。
そんなときにどうすれば良いかを説明していきます。

まず、一度決めた親権の変更をしたい場合、家庭裁判所で、裁判所での一定の手続を経ることが必要です。
要は、当事者間の協議による親権者変更は認められないのです。

そうはいっても当事者同士が合意しているのであれば、親権者の変更せずに実際の暮らしのみ変える方もいらっしゃいます。ただ、各種手当なども親権者が協力してもらう必要があります。

1 親権者変更の手続

親権者変更手続きはどのようなものか具体的に見ていきましょう。

まず、親権者変更調停が必要となります。

親権者変更調停とは、家庭裁判所において親権者の変更をすべきかどうか、話し合いをすすめていきます。

父母双方が合意していれば、家庭裁判所の調査官が子どもの状況を調査し、特段問題がなければ、調停によって親権者の変更が認められます。

その際、家庭裁判所調査官は、子どもの親や子ども自身と会って話をしたり、家庭訪問や学校訪問をしたりして子どもの生活環境、家庭環境、養育環境、監護者、監護補助者の状況などを調べ、親権者変更について、意見を提出します。

調停で父母が子どもの親権者変更について合意できない場合には、調停は「審判」という手続きに移行します。

審判では、裁判官が親権変更の是非について判断することになりますが、裁判官は、子どもの生活環境等を実際に見聞きした調査官による調査結果を非常に重要なものとして受け止め、親権者変更の是非を判断します。

なお、離婚後に生まれた子どもについて、認知した父親を親権者に指定する場合のみ、父母が合意して届け出ることにより、子どもの親権者を変更することができます。それ以外のケースでは、上記のような親権者変更調停や審判の申立てが必要となります。

2 親権者変更事由

親権者変更調停を申し立てたとしても、必ずしも親権者変更が認められるとは限りません。
子の福祉、要するに子供の健全な成長に適している環境が父母のどちらにあるかという観点から判断されます。

代表的な例は下記の通りです。

①親権者からの虐待、育児放棄

論外と言えます。それが事実であれば親権者変更が認められる可能性が高いです。

 

②親権者が死亡、重大な病気、行方不明

事実であれば子供を育てることは難しいと言え、親権者の変更が認められやすいといえます。
親権者変更手続完了前に親権者が死亡した場合、「未成年後見」という手続きが開始するため「未成年後見人」が子どもの法定代理人となります。
その場合当然に他方の親に親権が移るわけではありません。

③子どもの希望

子ども自身が親権者の変更を望んでいるケースでも、親権者変更が認められることがあります。
子どもが15歳程度になってくると、子どもの意思を尊重してもらえることが多くなるので、子どもの意思により、子どもが望む方に親権者を決めることができる場合があります。
いずれにせよ、調査官の調査が重要となります。

以上のように、親権者変更が認められるためには、子どもの健全な成長のため、親権者変更を要すると言える事情が必要です。

面会交流を認めてもらえない場合、それだけでは親権者変更が認められませんが、1つの事情にはなります。離れていても親であり、親との交流は子の健全な生育に必要と考えられています。

3 親権者変更は弁護士に依頼するべきか

親権者変更のため弁護士に依頼した方が良いのかどうか、迷っていらっしゃる方も多く居るのではないでしょうか。弁護士に依頼すべき場合を述べていきます。

①相手が親権者変更に同意しないとき

この場合、調査官の調査への対策と自らが相手方よりも親権者に適していることを裁判所に対して法的に立証していかなくては親権者変更が認められません。

裁判所が検討すべき要件に沿い、証拠を収集して立証していくことは弁護士でなければ極めて困難と言えます。

②ご自身でどうしてよいかわからないとき

上記の通り、裁判所に自己が親権者に相応しいと認めてもらう必要があるのに、自分ではどのように何をしていいかわからない、こんな状況では認めてもらえるものも認めてもらえなくなります。

③手続を円滑に進めたいとき

なるべくスムーズに親権者変更を認めてほしいケースでも、弁護士への依頼をおすすめします。
ご本人が対応していると、裁判所が知りたいと考えている事項を把握するのが難しく裁判所の求める事項がわかったとしても、ご本人から的確な回答ができないということもあります。裁判所との意思疎通が適切に図れないと、その分、期日を重ねることになり、手続きが長期化してしまいます。

4 さいごに

以上、親権者変更について説明してきましたが、実際の手続は本当に難しくセンシティブになっています。事実の立証自体が難しいため、簡単にはいかないことが大変多くなっています。

まずは一人で悩まずに専門家の意見を聞いてみることをお薦めします。
とはいっても、親権について経験している弁護士は限られているため、専門家として信頼できる弁護士に相談することが重要です。

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執筆者
島武広 
島法律事務所 
代表弁護士(神奈川県弁護士会所属)

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