共同親権で何が変わる?離婚前に知っておくべきQ&A

共同親権で何が変わる?離婚前に知っておくべきQ&A

2026年4月から共同親権制度が施行されます。

そんな共同親権について代表的なQ&A形式で説明していきます。

 

 Q1. 共同親権はいつから開始されますか? 

 

A 2026年4月からと決定しました。

そのため、現在継続している事件において、裁判官や調査官から「共同親権についても頭に入れておいてください」などという指示がされることがあります。

 

 Q2. すでに離婚している場合、自動的に共同親権になりますか? 

 

A なりません。

共同親権への変更を希望する人間が、親権者変更の申し立てをし、裁判所が共同親権とすべきと判断してはじめて認められます。

 

まず、単独親権から共同親権への変更には、DVなどのこの利益を害すると認められる必要的単独親権事由がないことが必要です。親権を決定した際に、必要的単独親権事由があった場合、その後にそのような状況がなくなったことを立証しないとなりません。

現実的にはかなり難しいといえます。

 

必要的単独親権事由がない場合、①単独親権とした当時の状況、②その後の事情変化、③その他事項を総合考慮して共同親権にするかを判断していきます。

具体的には①はしっかりと公平な立場で協議して決めたかどうかを重視します。例えば、DVなどの力差を利用して決めた場合などは単独親権としたことはそれほど重視されなくなります。

②は、離婚を契機に父母の関係が改善し、今後共同親権にしても問題ないと認められる必要があります。

③については、親権は子の福祉のためにあるものであり、子に関する事情であればすべて考慮することができます。

 

以上を前提にすると、共同親権が導入されたからといって、すぐに共同親権が認められるわけではなく、父母間に信頼関係が存していることが必要となり、そういった信頼関係がある場合に裁判所に申し立ててまで変更したいという事案は限られると思料されます。

あるとすれば、離婚後の対応で父母として一緒に親権を行使した方がよいと双方が感じ、双方の希望で申し立てをするときにくらいしか単独親権を共同親権に変更する事案は考えづらいと認識しています。実際の運用がどうなるかはしばらく注視していく必要があります。

 

 Q3. 養育費の支払いや不払い時の対応は、共同親権でどう変わりますか? 

 

A まず、養育費をはじめとする監護に関する費用には先取特権が付与されたため(新民法306条及び308条の2)、審判、調停調書、公正証書といった債務名義がなくても相手の財産から優先的に支払いを受けることが可能になりました。

弁護士の作成した合意書や当人同士で作成した文章などでも、強制執行が可能になります。

先取特権の優先順位も雇用関係の先取特権の次順位と優先される扱いになっています。

しかし、強制執行には、債権債務の特定が必要なことは変わらず、実務上の影響としては弁護士が入っての合意書や離婚協議書をもって強制執行が可能となるということになるのではないでしょうか。

もちろん、債権債務を特定する文章を一般の方が作成できるなら大いに意義がありますが、実際にそういった文章を作成できる方は殆ど見かけません。

 

また、新法では法定養育費制度が新設され、DVなどを理由にした場合、正式な養育費が決まるまでに一定の金額を受け取れるようになりました。

ただ、あくまでも正式な金額が決まるまでの暫定の支払いであるため、基本的には従前通り養育費の支払いを求め、拒まれたら調停、調停で合意できなければ審判と請求していくことに変更はありません。

養育費の請求をしているのに真っ向から支払いを拒否する相手に対して、法定養育費を請求して早期支払いを求めていくことが想定されます。

決定するまで暫定の仮払いをしてくれる相手には用いない可能性が高いです。

 

 Q4. 子供の進学・転居・手術など、どこまで相手の同意が必要ですか? 

 

A 離婚時に共同親権と定められた場合は日常的な事項以外の重要事項は基本的に父母双方の同意が必要になります。

しかし、監護権者を定めることで同意なく一方の親が決定できることになります。

従前は、親権者=監護権者であったため、このような問題は生じず、親権をどちらが取るかに集中することができました。

新民法では、共同親権が認められたため、共同親権であることを前提に、どちらかの親を監護権者として意思決定をスムーズにする制度が創設されました。

 

しかし、安易にこの制度の利用を認めては共同親権を創設した趣旨が没却されるため、監護権者を定める必要性が認められた場合のみに監護権者を指定することになります。

監護権者の指定をするくらいなら、共同親権から単独親権への変更をするのではないでしょうか。自身のみに監護権をと考えるということは共同親権とする前提を書いているように思います。

 

監護権者となった場合、新法は、①教育、②居所、③営業の許可について決定権があることを認めています(新民法820から823条)。

特に、監護権者ではない共同親権者は監護権者の子の教育についての決定権を妨げてはならないとされています(同824条の3第2項)。

 

運用されてからの状況を注視する必要がありますが、監護権者を指定することはそれほど多くなく、事項の分掌(共同親権者のどちらが重要事項について判断するかの定め)や親権行使者の指定制度を用いることになります。

 

教育、居所、営業の許可などについて、事項の分掌や親権行使者の指定を受ければ、他方の同意を得る必要がなくなります。

 

 Q5. DVや虐待がある場合でも、共同親権を選ばなければなりませんか? 

 

A その必要はありません。

新民法では、「この利益を害すると認められるとき」(819条7項)には、必要的単独親権事由があるとされ、その場合単独親権となります。

そして、DVと虐待は必要的単独親権事由の代表例とされています。

DVや虐待がある場合、離婚時に共同親権になることなく、更に、離婚後に共同親権にすることもかなり困難となります。

 Q6. 施行までに離婚する場合、どのような準備や取り決めが必要ですか?

 

A 従前とおりに離婚すれば大丈夫です。

施行前に何かを変える必要はありません。

ただ、後日相手が共同親権を求めてきた場合に、そのまま単独親権にしたいと考えているのであれば、単独親権と決める過程で、対等な立場で、十分な協議を尽くして決めたことが分かるような資料を残しておくと万全です。

執筆者
島武広 
島法律事務所 
代表弁護士(神奈川県弁護士会所属)

当サイトでは、離婚問題にまつわるお悩みに対して、弁護士の視点で解説をしています。また、当事務所にて携わった事案のポイントも定期的に更新しています。地元横須賀で、「迅速な解決」を大切に代理人として事件の解決に向けて取り組んでいます。

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