外資系サラリーマンの離婚の注意点 弁護士が徹底解説

1.外資系企業勤務者の離婚はなぜ「普通の離婚」と違うのか

外資系の金融機関、コンサルティングファーム、GAFAMなどのIT企業に勤める方(またはその配偶者)が離婚する場合、一般的な会社員の離婚とは全く異なる、非常に複雑な論点が生じます。

その理由は、「基本給に加えて高額なインセンティブやボーナスが存在すること」「給与の一部が株式報酬(RSUなど)で支払われること」「資産が国内外に分散し、外貨建てのものも含まれること」「労働環境が激務であり、すれ違いが生じやすいこと」などが挙げられます。

これら特有の事情により、離婚に向けた話し合いでは、財産分与の対象範囲の特定や価値の算定、そして生活費(婚姻費用)や養育費の金額決定において、一般的な裁判所の基準(算定表)をそのまま当てはめることができず、激しい対立が起こりやすくなります。

外資系特有の報酬体系や資産構造を正しく理解せずに離婚交渉を進めると、本来受け取れるはずの財産を見落としたり、逆に不当に高い支払いを強いられたりするリスクがあるため、専門的な知識を持った弁護士のサポートが不可欠となります。

2.婚姻費用・養育費の算定が複雑になる「3つの理由」

離婚に向けた別居中の生活費(婚姻費用)や、離婚後の養育費を決める際、家庭裁判所が公開している「算定表」を用いるのが一般的ですが、外資系サラリーマンの場合は以下の理由から算定表を単純に適用できません。

① 収入が算定表の上限(給与年収2000万円)を超えている

外資系企業では給与年収が2000万円を超えるケースが珍しくありませんが、算定表は2000万円までしか対応していません。上限を超える部分については、「算定表の上限額で打ち切る」「基礎収入割合を修正して計算する」「実際の生活費から個別に算定する」など複数の計算方法が主張され、裁判でも判断が分かれます。

② ボーナスの割合が大きく、年によって収入変動が激しい

外資系企業では、基本給の他に、個人の業績に連動するインセンティブ・ボーナスや、入社時のサイニング・ボーナスなどが支給されることがあり、これらが年収の大きな割合を占めます。

これらのボーナスは毎年必ず同じ金額が支払われる保証がないため、「今年だけたまたま高かった」のか、「恒常的な収入」として算定の基礎に含めるべきか、さらには過去数年分の平均を取るべきかといった点が争点になります。

③ 超高額な教育費(ボーディングスクールやインターナショナルスクール)の扱い

グローバルな環境で育てるため、子どもを海外留学させたりインターナショナルスクールに通わせたりしている場合、その学費は年間数百万から数千万円に上ります。

通常の算定表には公立学校の標準的な学費しか含まれていないため、これらの高額な学費をどちらがどのように負担するか(特別費用として相手に上乗せして請求できるか)は、夫婦間の同意の有無や双方の収入状況をもとに個別に激しく争われます。

3.最も厄介な「株式報酬(RSU・ストックオプション)」の財産分与

外資系企業の報酬体系で最も特徴的であり、かつ財産分与で最大の争点となるのが「株式報酬」です。

RS(リストリクテッド・ストック)やRSU(リストリクテッド・ストック・ユニット)、ストックオプション(SO)など、給与の一部として自社株やその購入権が付与される制度です。

これらの株式報酬は、付与されてから数年後に権利が確定(ベスティング)し、実際に売却して現金化できるようになるという性質を持っています。

そのため、財産分与においては「権利確定前(まだ売却できない状態)の株式報酬も分与の対象になるのか」「付与された時期と婚姻期間の重なり具合(日数比率など)をどう計算するか」という非常に難解な問題が発生します。

さらに、離婚時に転職や退職をして権利が消滅してしまった場合、それを財産分与から完全に外してよいのか、それとも「意図的な財産減らし」とみなして補償を求めるのかといった点も法的な争いになります。

4.海外資産と「為替リスク」、ジョイント口座の問題

外資系サラリーマンの場合、給与が外貨で支払われたり、海外の銀行に口座を持っていたり、海外不動産に投資していたりと、資産が国境を越えて分散しているケースが多々あります。

財産分与の対象となる資産は原則として「別居時」を基準に確定しますが、その「評価額」は実際に分与を行う「離婚時(または直近の合意時)」を基準とします。

外貨建て資産の場合、別居時と離婚時とで為替相場(円安・円高)が大きく変動すると、円換算した際の財産価値が激変するため、どの時点の為替レートを採用するかで分与額に数百万円以上の差が生じることもあります。

また、アメリカなどで一般的な「ジョイント口座(夫婦共有名義の口座)」がある場合、日本の法律と現地の法律のどちらを適用して分割すべきかという国際的な法務問題も発生します。

5.激務や頻繁な海外出張がもたらす「すれ違いとモラハラ」

金銭面だけでなく、外資系コンサルタントなどの激務が離婚の直接的な原因(離婚事由)となることも少なくありません。

連日の深夜残業や長期の海外出張、クライアント先への常駐などにより、家庭での会話や共有時間が極端に少なくなり、事実上の別居状態や深刻なすれ違いが生じます。

また、職場での厳しい成果主義や合理性を重んじる価値観を家庭内にも持ち込み、「誰のお金で生活できていると思っているんだ」「論理的に説明しろ」と配偶者を部下のように扱い、精神的に追い詰める(モラハラ)ケースも散見されます。

こうした事情は、単なる性格の不一致ではなく、離婚を求める正当な理由として主張できる可能性があり、親権や監護権を争う際にも重要な判断材料となります。

6.外国籍・二重国籍である場合の「国際裁判管轄と準拠法」

本人や配偶者が外国籍である場合、あるいは二重国籍である場合は、「日本の裁判所で離婚できるか(国際裁判管轄)」、「どこの国の法律を適用して財産を分けるか(準拠法)」という根本的な問題が生じます。

例えば、アメリカの一部の州の法律が適用される場合、「離婚後も長期間にわたって元配偶者の生活を保障する(アリモニー・配偶者扶養)」という日本にはない重い義務が課され、支払総額が莫大なものになる可能性があります。

相手の国籍や資産の所在国によっては、日本の法律だけで考えていると足元をすくわれるため、国際離婚に精通した対応が不可欠です。

7.複雑な税金(譲渡所得税など)への配慮

高収入である外資系サラリーマンの離婚では、多額の財産が動くため税務上の落とし穴にも注意が必要です。

現金で財産分与をする場合は基本的に税金はかかりませんが、購入時よりも大きく値上がりしている不動産や株式(自社株を含む)を「現物」で分与した場合、分与した側(渡した側)に「譲渡所得税」という多額の税金が課せられることがあります。

せっかく財産分与の合意ができても、その後の税金で想定外の支出を強いられることがないよう、離婚の合意書を作成する段階で税理士などの専門家を交えて税負担を織り込んだ計算(手取り額の調整)を行っておく必要があります。

8.外資系企業の離婚問題は「専門の弁護士」へ相談を

外資系サラリーマン世帯の離婚は、巨額の資産と複雑な報酬体系(株式報酬、ボーナス、海外資産など)が絡み合う、一般的な離婚事件の枠を超えた「高度なビジネス法務と家族法が融合した総合案件」です。

配偶者が会社からどのような形で報酬を受け取っているのか、RSUの権利確定スケジュールはどうなっているのか、海外口座にいくら隠されているのかを正確に調査し、適正な価値を算出することは、個人では不可能です。

少しでも離婚を考え始めたら、相手に財産を移されたり隠されたりする前に、富裕層や外資系企業の離婚実務に精通し、税理士や海外の法律にも明るい弁護士に一刻も早く相談してください。

弁護士があなたの代理人として証拠の収集や複雑な資産の評価を行い、裁判所の基準と高度な交渉術を駆使して、あなたのこれからの人生と生活水準を守るための最大限の財産分与と婚姻費用を勝ち取ってくれます。

是非島・鈴木法律事務所初回無料相談をご利用ください。

離婚弁護士として事案に即した適切なアドバイスをさせていただきます。

執筆者
島武広 
島・鈴木法律事務所 
代表弁護士(神奈川県弁護士会所属)

当サイトでは、離婚問題にまつわるお悩みに対して、弁護士の視点で解説をしています。また、当事務所にて携わった事案のポイントも定期的に更新しています。地元横須賀で、「迅速な解決」を大切に代理人として事件の解決に向けて取り組んでいます。

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