自営業の夫が収入を意図的に低くしている場合養育費はどうなる?弁護士が徹底解説

1. 自営業・経営者の夫との離婚で養育費トラブルが頻発する理由

離婚する際、子どもの養育費の金額は家庭裁判所が公開している「養育費・婚姻費用算定表」を用いて、夫婦双方の「年収」をベースに決めるのが一般的です。
相手が一般的な会社員であれば、源泉徴収票や給与明細を見るだけで年収を正確に把握することができます。
しかし、相手が個人事業主や会社経営者、同族会社のオーナー社長などの場合、自分の裁量で自身の給与(役員報酬)や経費を自由にコントロールできる立場にあります。
そのため、離婚や別居を意識し始めた途端に、養育費や婚姻費用(別居中の生活費)の支払いを極力安く抑える目的で、意図的に自身の収入を低く操作する「所得隠し」を行うケースが後を絶ちません。
表面上の確定申告書や源泉徴収票だけを見て「うちの夫は収入が低いから養育費は少なくて仕方ない」と諦めてしまうと、子どもが本来受け取るべき正当な権利を大きく損なってしまう危険性があります。

2. 自営業・経営者がよく使う「収入の過少申告」の3つの手口

養育費の支払義務者である夫が、どのようにして自分の収入を不当に低く見せかけているのか、その代表的な手口を知っておくことが重要です。

① 個人的な生活費を「会社の経費」として落とす(公私混同)

自営業者や経営者に最も多いのが、本来は個人の財布から払うべき私的な支出を、会社の経費(損金)として処理しているケースです。
例えば、家族で住む自宅の家賃や光熱費、個人的な高級車のローンや維持費、家族旅行の費用、日常の飲食代、さらには配偶者や愛人に持たせた法人名義のクレジットカードの支払いなどを経費に計上します。
これにより、帳簿上の個人の所得は極端に低く見えますが、実質的には会社に生活費を肩代わりさせているのと同じであり、実際の支払能力は申告額よりもはるかに高くなります。

② 不自然なタイミングでの役員報酬・給与の減額

会社の売上や業績が悪化していないにもかかわらず、離婚調停や別居が始まった途端に、突如として自分の役員報酬を半額にするなど、不自然に引き下げる手口です。
また、同族会社などで、親族ぐるみで取締役会を開き、意図的に夫の報酬を減らす決議を行う悪質なケースも見られます。

③ 会社に利益を溜め込む(内部留保)

会社自体には十分な利益が出ているのに、あえて自分の役員報酬を低く設定し、利益を会社内に留保させておく手口です。
個人の所得税や社会保険料を節税する目的もありますが、オーナー社長であれば会社のお金をいつでも引き出せる立場にあるため、表向きの個人所得が低くても実質的な経済力は高いとみなされます。

3. 誤魔化された収入を暴き、適正な養育費を算定する方法

夫が提出してきた確定申告書や源泉徴収票の金額が不自然に低い場合、裁判所や弁護士は以下のような法的なアプローチを用いて、夫の「真の収入(実質的収入)」を暴き出し、適正な養育費を再計算します。

① 私的経費の加算(可処分所得の再計算)

夫の会社の「決算書(貸借対照表や損益計算書)」「勘定科目内訳書」「総勘定元帳」などを詳しく調査します。
その結果、本来個人の生活費であるべき支出(家賃、車の維持費、私的な飲食代など)が経費として計上されていることが判明した場合、その金額を夫の「個人の収入」として加算し直して養育費を計算します。
また、実際にはお金が出ていっていない「減価償却費」が過大に計上されている場合も、その金額を所得に足し戻して計算するのが裁判実務の基本です。

② 減額前の収入や「潜在的稼働能力」に基づく認定

正当な業績悪化などの理由がないのに意図的に役員報酬を下げたことが明らかな場合、裁判所は「減額される前の過去の年収」をベースに養育費を算定することがあります。
また、健康で働く能力があるのにわざと収入を低く抑えている場合、「同等の年齢・学歴の男性の平均賃金(賃金センサス)」を用いて、「働けばこれくらい稼げるはずだ」という「潜在的稼働能力」を基準に養育費を認定することもあります。
「嘘の収入でごまかされるくらいなら、平均賃金で計算してもらう」と主張することは、相手への強力な牽制になります。

4. 証拠となる資料の集め方と開示させる手段

夫の不正を暴くためには、会社の決算書や過去数年分の確定申告書、法人名義の通帳のコピーなどの客観的な資料が不可欠です。
同居中であれば、自宅にある会社の資料や税金の通知書などをできる限りコピーしておくことが最大の防御策となります。
しかし、すでに別居していて資料が手元にない場合や、夫が開示を拒否した場合はどうすればよいのでしょうか。
弁護士に依頼すれば、以下のような法的な強制力を持った制度を利用して、相手の収入状況を調査することができます。

* 弁護士会照会(23条照会):弁護士会を通じて金融機関などに直接照会をかける制度です。
* 調査嘱託・文書送付嘱託:調停や裁判の中で、裁判所を通じて金融機関や役所に情報の開示を求める制度です。
* 情報開示命令(2026年4月施行の新制度):裁判所が当事者に対して収入や資産の開示を命じる制度で、虚偽の報告や拒否をした場合は10万円以下の過料(ペナルティ)が科されるようになりました。

5. 泣き寝入りしないために弁護士に依頼すべき理由

自営業者や経営者の夫との離婚交渉は、給与所得者同士の離婚とは比較にならないほど難易度が高く、泥沼化しやすいのが特徴です。
夫側も「自分の財産や会社のお金を妻に渡したくない」と必死に抵抗し、税理士などを巻き込んで巧妙な所得隠しを行ってくるため、素人である妻が一人で立ち向かうのは事実上不可能です。
相手の提示する「低い年収」をそのまま鵜呑みにしてしまうと、子どもが成人するまで毎月受け取る養育費が数万円単位で減らされ、トータルで数百万円から一千万円以上の損をすることになりかねません。
離婚問題や企業法務に精通した弁護士に依頼すれば、複雑な決算書から不審なお金の流れを見抜き、相手の「意図的な所得の切り下げ」を法的に厳しく追及してくれます。
また、交渉の窓口をすべて弁護士に一本化できるため、モラハラ気質の夫から直接「これ以上は払えない」と威圧される精神的苦痛からも解放されます。
子どもの将来を守るための適正な養育費を獲得するために、まずは迷わず弁護士の無料相談を活用してください。
是非島・鈴木法律事務所初回無料相談をご利用ください。
離婚弁護士として事案に即した適切なアドバイスをさせていただきます。

執筆者
島武広 
島・鈴木法律事務所 
代表弁護士(神奈川県弁護士会所属)

当サイトでは、離婚問題にまつわるお悩みに対して、弁護士の視点で解説をしています。また、当事務所にて携わった事案のポイントも定期的に更新しています。地元横須賀で、「迅速な解決」を大切に代理人として事件の解決に向けて取り組んでいます。

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